芦刈のしたたり落つる日を負へる
さびしくてならねば菊を買ひに出ぬ
菊さしてつくづく見れば菊さびし
蕎麦を刈るかかる真昼のかそけさに
秋桑を摘む音ばかり声もせぬ
父待ちついねし子の手の栗持てる
とんぼ追ふ子らにをさなくひとりゐる
めざめよき子なり芙蓉に抱きたつ
うれしさは捕りしとんぼをわかちゐる
萩咲いてきのふの夏をはるけくす
初萩になほあつき日の水をうつ
赤城見え黍の穂ゆれがわづらはし
草の実のこぼれ鮠とびこともなし
思へるはをさならのこと鉢の菊
虫鳴くやわけて今宵は身にちかく
菊に来るひまをぬすむも朝のうち
こころふとせかれつ去りし菊の前
菊つかれ巷のそらも疲れたる
梨ふくろ古り雲しろく湧きつ湧きつ
梨ふくろ古りつつ瀬々の鮎落ちぬ
梨ふくろ古りきちきちのこれを越ゆ
梨ふくろしろし秋の日しんと照り
熔岩のみちしづかなる日の萩咲けり
熔岩は灼け草ふく風は秋のかぜ
少年ら血はながしたれ蝉すずし