和歌と俳句

夢とのみ一字に菊のしろきかな 万太郎

家妻のあはれつましき小菊咲く たかし

大人すげなく子供しつこし菊の金 草田男

菊咲くや人気小傳次吉右衛門 万太郎

白ぎくと黄菊のまさり劣りかな 万太郎

その労の妻にもすこし菊開花 爽雨

一とせは人を老いしめ菊に会ふ 爽雨

蝙蝠の終の二羽とび菊夕べ 爽雨

疲れては朝の茶うまく菊咲きぬ 秋櫻子

菊映ゆる厨子より黒き御像 秋櫻子

来年の今日をおもへと菊白き 万太郎

菊咲けり雨降り飽きて澄める日に 秋櫻子

菊咲くや家ぬちくらき太柱 秋櫻子

菊の香や芭蕉をまつる燭ひとつ 秋櫻子

束ねてはむらさき勝てり畑の菊 秋櫻子

菊の香をやや遠ざけて消燈す 波郷

黄菊白菊自前の呼吸すぐあへぐ 波郷

瓶の菊夜は窓まで闇が来る 波郷

菊をみる菊にみられて澄みにけり 静塔

菊作り仕上げし菊に現れず 静塔

壺の菊と目守りあひしが稿起す 爽雨

我生きて在るは人死ぬ菊花哉 耕衣

大佛に菊道の辺の佛にも 林火