教へ子と教師と闇の藷がたり
南瓜食ひつづけて教師目が黄なり
晩稲刈かがめば立てる一樹かな
雁わたる丘のかげより汽車蒸気
生ありて三鬼の鬚に冬の鼻
渡り鳥日輪棄てし雲のひま
冬満月われをうかがふ目を感ず
歌同じ義足を雪の辻に立て
雪虫の入日の後の行方かな
向うむきの寒雀より街めざむ
蒲団より首出してゐて夕焼けぬ
枯野の絵枯木の家に遺されぬ
睡りさへ遁走に似て秋の風
父に子に明日への希ひ蓮の実とぶ
檻の鷲世は雪ふりてゆくばかり
終りに近きショパンや大根さくさく切る
今日得たる独語のひとつ雪のキャベツ
蟹の脚の毛に雪ふりぬ一二片
月明の海や落葉を吹きかへす
門を出て思ひかはるや冬の虫
冬の虫言はぬ一言とはに生く
ペン凍るわが半生のあぶら汗
宙にわく雪片一縷ののぞみつづく
パン種の生きてふくらむ夜の霜