落椿くぐりて水のほとばしり
もり上り花あるところお寺かな
花だより書くひまありし貴船かな
土佐日記懐にあり散る桜
山櫻又現れて来りけり
国境の橋の小さし山櫻
身をよせて西行櫻親しけれ
花篝衰へつつも人出かな
岩の間に人かくれ蝶現るる
川波に山吹映り澄まんとす
学僧に梅の月あり猫の恋
ぱつと火になりたる蜘や草を焼く
我心漸く楽し草を焼く
風の日の麦踏み遂にをらずなりぬ
わが好きの紅梅のある絵巻物
叱られて泣きに這入るや雛の間
春の水流れ流れて又ここに
鯉群れて膨れ上りぬ春の水
草萌や大地総じてものものし
一本の枯木がくれの歸雁かな
燕のゆるく飛び居る何の意ぞ
大方は泥をかぶりて蘆の角
行平に土筆煮え居る母の居間
落ち込んで鼠の逃ぐる芹の水