和歌と俳句

皆吉爽雨

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遊船をよせて温泉をふく巌かな

鵜をさばくひまの会釈をくれにけり

早乙女の戸をたちいづる手を茱萸へ

のぞきゐる山は丹波や鮎の渓

峰高く煙らせてをり滝見茶屋

涼し案内同士も話しをり

鵜の川に寺もかけたる桟敷かな

神棚も見えて鵜の蚊帳引かれけり

投げし餌をあとしざりふむ鹿の子

皆立ちて舟のとゞまる蓮見かな

瓜舟に会ひつゝ暁くる蓮見かな

蓮飯も炊けつゝ蓮の雨やまず

避暑宿の游魚におろす簾かな

早乙女瀬田の競漕また発ちぬ

志摩の田は岩のちらばる田植かな

鮎宿の窓の散らせる火の粉かな

鮎川の橋を繭の荷ばかりかな

家々は上簇の灯や蛍狩

藺田を刈るさ中の駅の蚊遣かな

庭池もたゝへし温泉や涼み宿

涼風の長き橋きて鳥居かな

早乙女の足を流れにひるげかな

真菰中鹿島詣での舟ひろふ

噴煙へ馬ひきむけつ登山かな

登山馬いなゝきよぎる牧場かな