遊船をよせて温泉をふく巌かな
鵜をさばくひまの会釈をくれにけり
早乙女の戸をたちいづる手を茱萸へ
のぞきゐる山は丹波や鮎の渓
峰高く煙らせてをり滝見茶屋
滝涼し案内同士も話しをり
鵜の川に寺もかけたる桟敷かな
神棚も見えて鵜の蚊帳引かれけり
投げし餌をあとしざりふむ鹿の子
皆立ちて舟のとゞまる蓮見かな
瓜舟に会ひつゝ暁くる蓮見かな
蓮飯も炊けつゝ蓮の雨やまず
避暑宿の游魚におろす簾かな
志摩の田は岩のちらばる田植かな
鮎宿の窓の散らせる火の粉かな
鮎川の橋を繭の荷ばかりかな
家々は上簇の灯や蛍狩
藺田を刈るさ中の駅の蚊遣かな
庭池もたゝへし温泉や涼み宿
涼風の長き橋きて鳥居かな
早乙女の足を流れにひるげかな
真菰中鹿島詣での舟ひろふ
噴煙へ馬ひきむけつ登山かな
登山馬いなゝきよぎる牧場かな