和歌と俳句

皆吉爽雨

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風鈴の鳴りつぐうしろ一風樹

さうめんの真白き昼餉夏休

たばこ屋へ村道歩くことも避暑

神棚に護符いく重ね夏蚕飼ふ

日向恋ふごとく避暑人森を出づ

人の上の一人暗しも新茶くむ

牡丹ちる弁のゆるびにさし入る日

奥の温泉に痩せし奥利根河鹿鳴く

山開き終へし日焼けと湯浴みあふ

出羽の禰宜旅をいざなひくるる梅雨

竜巻の昇天終へぬ田草取る

塔あふぐ梅雨も五重にそそげるを

大事また過ぎやすかりし新茶汲む

馬柵の戸のごときに避暑の友を訪ふ

筒鳥に湯浴みは耳も聡くなりぬ

ががんぼや老いて臥所も書屋裡に

脚たわむ時をががんぼ歩きけり

一片の奇しくも遠し散牡丹

堂前にをしへとどまり道をしへ

万緑にしてなかんづく桂樹下

古町を旅の大づれ枇杷熟るる

蚊をとめて僧の大耳墓参みち

木々わたる葛の天蓋墓まゐり

掃苔に咲きそふ百合を損はじ

墨するといへば弔文梅雨長し