宿の古茶持参の新茶着きて汲む
わが碗にをさみししづく新茶くむ
朔日に処する朝の袷着る
蟻出でて幹にも道をはじめけり
浸りつつたゆたふ齢菖蒲風呂
汗ぬぐふ宇治は橋かげこそ激つ
新茶買ふ壺みな光る宵の灯に
紫陽花や墨も匂はず弔句書く
万緑の湖畔はなべて幹倒れ
嶺にくだる雲ゆ郭公鳴きいそぐ
足もとに梅雨の山湖のなぎさ澄む
牧にして郭公のかつ翔くるあり
那須の野の清水が出湯かとぞ寄る
禅苑をあゆむまにまに蟻さだか
庭木なる葉の一枚を見て大暑
甚平とはだへのひまの老ひけらし
くさぐさに弓の一弦武具飾る
村道のまた蕗に沿ふみづみづし
絣着に田を植う賤ケ岳ふもと
蕗の葉に落ちしは桐の花著き
落し文経巻めけば手につつむ
飛びならふ子燕の中ぬけて親
崖すがりしては子燕飛びならふ
岩の上の憩ひに夏野雨到る