和歌と俳句

皆吉爽雨

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

宿の古茶持参の新茶着きて汲む

わが碗にをさみししづく新茶くむ

朔日に処する朝の着る

出でて幹にも道をはじめけり

浸りつつたゆたふ齢菖蒲風呂

ぬぐふ宇治は橋かげこそ激つ

新茶買ふ壺みな光る宵の灯に

新茶くむ宇治の朝けは窓に瀬々

紫陽花や墨も匂はず弔句書く

万緑の湖畔はなべて幹倒れ

嶺にくだる雲ゆ郭公鳴きいそぐ

足もとに梅雨の山湖のなぎさ澄む

牧にして郭公のかつ翔くるあり

那須の野の清水が出湯かとぞ寄る

禅苑をあゆむまにまにさだか

庭木なる葉の一枚を見て大暑

甚平とはだへのひまの老ひけらし

くさぐさに弓の一弦武具飾る

村道のまたに沿ふみづみづし

絣着に田を植う賤ケ岳ふもと

蕗の葉に落ちしは桐の花著き

落し文経巻めけば手につつむ

飛びならふ子燕の中ぬけて親

崖すがりしては子燕飛びならふ

岩の上の憩ひに夏野雨到る