和歌と俳句

松本たかし

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

葛城の額を塗りて残る雪

葛城の神の鏡の春田かな

三山の三つを眼にせりの昼

香具山は畝傍を愛しと添い

春雨の帷垂らせる三輪の山

朧夜の山に山火の首飾

道端の窓のも四日かな

築土なる古草からむ咲きぬ

実朝忌春動かむとしてためらふ

春雨の雲居る山に家居かな

家設けしつつすぐれず花の雨

みちのくに田螺取り食ひ在りと知れ

木の芽中那須火山脈北走す

学校の花咲き四方に馬耕せり

峯の雪遠繞らせる里

遠山は雪まさるべし花の雨

山脈に暮春の雪や百花咲く

のゆるがす崖に温泉壺かな

囀るや浄らに峡の忘れ雪

や内湯外湯と好むまま

春月や湯小屋のかげの忘れ雪

温泉澄みて湯気も立たずよ梅二月

谷は湯小屋の人語更くるまで

紅梅や赤城颪によろめきて