松本たかし
葛城の額を塗りて残る雪
葛城の神の鏡の春田かな
三山の三つを眼にせり蝶の昼
香具山は畝傍を愛しと添い 霞
春雨の帷垂らせる三輪の山
朧夜の山に山火の首飾
道端の窓の雛も四日かな
築土なる古草からむ梅咲きぬ
実朝忌春動かむとしてためらふ
春雨の雲居る山に家居かな
家設けしつつすぐれず花の雨
みちのくに田螺取り食ひ在りと知れ
木の芽中那須火山脈北走す
学校の花咲き四方に馬耕せり
峯の雪遠繞らせる里櫻
遠山は雪まさるべし花の雨
山脈に暮春の雪や百花咲く
囀のゆるがす崖に温泉壺かな
囀るや浄らに峡の忘れ雪
鶯や内湯外湯と好むまま
春月や湯小屋のかげの忘れ雪
温泉澄みて湯気も立たずよ梅二月
谷は朧湯小屋の人語更くるまで
紅梅や赤城颪によろめきて