春雨や明けがた近き子守唄
枯草の中の賑ふ春の雨
睡たさよ筆とるひまの春の雨
麗かな砂中のぼうふ掘りにけり
花杏はたはた焼けばかすみけり
陽炎や手欄こぼれし橋ばかり
葱の皮剥がれしままにかぎろひぬ
昼深く春はねむるか紙しばゐ
石蕗の茎起きあがり水ぬるむ
森をぬく枯れし一木や囀りす
屋根石の苔土掃くや帰る雁
昼蛙なれもうつつを鳴くものか
頬白や耳からぬけて枝うつり
鮴のぼる瀬すぢは花の渦となり
鮴の串日はみんなみにかたよれり
蝶の腹やさしくは見る歯朶の上
おねはんの忘れ毬一つ日暮かな
凧のかげ夕方かけて読書かな
凧の尾の色紙川に吹かれけり
若くさの香の残りゆくあはゆきや
ねこ柳のほほけ白むや雛の雨