和歌と俳句

会津八一

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くわんおんのだうのいたまにかみしきてうどんのかびをひとりほしけり

かたはらにものかきをればほしなめしうどんのひかげうつろひにけり

のきしたにたちくるくさのたかだかとはなさきいでぬひとりすめれば

にははれてえひろごれるやまぶきのえださししのぐはぎのはなぶさ

うゑおきてひとはすぎにしあきはぎのはなぶさしろくさきいでにけり

あきふかみみだうののきにすごもるとかやにはねうつはちのむれみゆ

みゆきふるふゆをちかみかわがかどにひにはこびこしそまびとのしば

おほきひといでてをしへよもろびとのよりてすすまむひとすぢのみち

ひとつひのひかりもしらずくらきののはてにもみちのあらざらめやも

とこよなすをぐらきのべとあれぬともひとあるところくになからめや

あさゆきてまなびしふみのからうたをひとりずしつついねしよもあらむ

あさひさすほたのほのへのつるしがきほのしろみかもとしはきぬらし

みゆきつむたのもこえきてふるにはのこぬれとよもすわたつみのかぜ

すべもなくやぶれしくにのなかぞらをわたらふかぜのおとぞかなしき

あうたうのえだにこもりてわがききしさつきのえだのをとめらがうた

あうたうのえだのたかきにのぼりゐてはるけきとものおもほゆるかも

のぼりゐてわがはくたねのひとつづつくさにかくるるあうたうのえだ

つかさびとことあやまりてひとひらのやけのとやきしくにぞくやしき

ちちははのくににきたれどちちははもすでにいまさずものなしわれは

はるすぎてなつきたれどもしろたへのひとへごろももあらぬわれかも

けさのあさゑがきしきくのしらつゆのかわきなはてそとしはへぬとも

ともしびのかげのさむきにひとりみるけさゑがきたるしらぎくのはな

たけゑがくふでのしたよりふきいでてみそらになびくあきかぜのおと

あきかぜのひにけにふけばひさかたのみそらになびくひともとのたけ

のちのよをこぞりてひとのしのぶともふたたびあはむわれならなくに