和歌と俳句

会津八一

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よりたてばはにわのうまのたてがみのあらきくしめにこころはいりぬ

うみゆかばみづくかばねとやまがはのいはほにたちてうたふこらはも

もみぢばのたにまはるけくわたりきてこけまだらなるてらのきざはし

なみたたすほとけともしみいくとせをつぎてきにけむやまのたをりに

わたるひのひかりともしきやまでらのしづけきゆかにたつほとけたち

こんだうのくらきをいでてこのまなるくさのもみじにめをはなちをり

しよくとりてむかへばあやしみほとけのただにいますとおもほゆるまで

うらわかくほとけいましてむなだまもただまもゆらにみちゆかしけむ

すがしくもはなやぎてこそおはしけれにつたうしやもんへんぜうこんがう

みゆきふるかうやおりきてこもりねしならのやどりのよひのともしび

かすがののもりのこぬれをつたひきてさるなくらしもやどのふるには

とりはててひとつのかきもなきにはのなににしぬびてあそぶさるかな

すめろぎのくにたたかふとかすがなるやまべのさるのしらずかもあらなむ

ひとのよのつみとふつみのことごとくやきほろぼすとあかきひあはれ

うつせみのちしほみなぎりとこしへにもえさりゆくかひとのよのために

うつせみはあけにもえつつくりからにみはりてしろきまなこかなしも

いにしへのひじりのまなこまさやかにかくをろがみてゑがきけらしも

あかふどうわがおろがめばときじくのこゆきふりくものきのひさしに

さちあれとはるかにならのふるてらにたくなるごまのわれにみえくも

もえさかるごまのひかりにめぐりたつ十二のやしやのかげおどるみゆ

あささむきをかのみだうにひれふしてずずおしもむときくがかなしき

みほとけのあまねきみてのひとつさへわがまくらべにたれさせたまへ

うらわかくいへさかりきてほとほとにわがよはここにをへむとするも

むかしわがあしたゆふべによみつぎしふみなほありて書庫はかなしも

まなびすととしのよそぢをかかげこしわがむなぞこのほそきともしび

むかしひとこゑもほがらに卓うちてとかししおもわみえきたるかも

たちいでてとやまがはらのしばくさにかたりしともはありやあらずや