西島麦南
卯月野のほとけの親にあひに来し
炎天や死ねば離るる影法師
茅舎忌の夕虹蟇をかゞやかす
胡瓜もむエプロン白き妻の幸
五月の日眩しとなみだ溢るるか
枝蛙喜雨の緑にまぎれけり
若葉雨なにかやさしくものを言ふ
少女倚る幹かゞやかに百日紅
青富士の裾のキヤンプにめざめたる
短夜の死ぬるといふは眠ること
朝曇る柘榴の落花掃きにけり
灯を置いて飯食ふ蓼の豪雨かな
避暑日誌けふ朝虹を見しことも
浜木綿に夜の波白き祭笛
風の百合雌蕊受粉のよろこびを
矢車や谷戸はみどりの朝風に
余花の蝶しばらく波にあそびけり
緑蔭に眼帯の子をけふも見し
暾にぬれて露七宝のあかざかな
薔薇の息きく胎動をきくごとく