松尾芭蕉
夏
桜より松は二木を三月越し
笠嶋はいづこ五月のぬかり道
あやめ草足に結ん草鞋の緒
嶋じまやちぢにくだきて夏の海
夏草や兵共がゆめの跡
五月雨の降残してや光堂
蛍火の昼は消つつ柱かな
蚤虱馬の尿する枕もと
涼しさを我宿にしてねまる也
這出よかひやが下のひきの声
まゆはきを俤にして紅粉の花
閑さや岩にしみ入る蝉の声
さみだれをあつめて早し最上川
水の奥氷室尋る柳哉
風の香も南に近し最上川
有難や雪をかほらす南谷
涼しさやほの三か月の羽黒山
雲の峰幾つ崩て月の山
語られぬ湯殿にぬらす袂哉
めづらしや山をいで羽の初茄子
暑き日を海に入れたり最上川
象潟や雨に西施がねぶの花
ゆふばれや桜に涼む波の花
汐越や鶴はぎぬれて海涼し
あつみ山や吹浦かけて夕すずみ