和歌と俳句

松尾芭蕉

さざ波や風の薫の相拍子

湖やあつさをおしむ雲のみね

皿鉢もほのかに闇の宵涼み

ひらひらと挙るや雲の峯

蓮のかを目にかよはすや面の鼻

灌仏や皺手合する珠数の音

烏賊売の声まぎらはし杜宇

別ればや笠手に提て夏羽織

降ずとも竹植る日は蓑と笠

此宿は水鶏もしらぬ扉かな

紫陽草や帷巾時の薄浅黄

花と実と一度にのさかりかな

ほととぎす今は俳諧師なき世哉

松風の落葉か水の音涼し

白芥子や時雨の花の咲つらん