白桔梗たましひぬけといひつべし
蓋ありて明暗わかつ泉かな
生身魂きざす涙を笑ひ草
生盆や物故なされし露伴翁
月の池馬頭観世音侍したまふ
そぞろ行くここらが月の瓶原
去る者を追はず天下の子規忌かな
茶の花のうひうひしくも黄を点じ
秋晴やつひに微塵の雲も莫し
三千寺いづこ濃紅葉薄紅葉
しぐれつつ路傍の石も成佛す
冬の山たふれむばかり今日もあり
ミサの鐘頓に風花とびまさり
山国や夢のやうなる冬日和
凩やしばしば鳶の落ちる真似
投げし音耳に反し慈善鍋
馬画き厩めきけりクリスマス
破魔矢白く押物朱く賜はりし
ころがりてありし瓶子や注連焚火
注連焚きて斎の庭に跡とどむ
古風なる筥にねむれる歌留多かな
かぎりなき雪道我を帰さざる
水仙の花を貫く緑かな
潮騒にたんぽぽの黄のりんりんと
リリアンの覆ふ春燈僧の居間
夜燕はものやはらげに羽ばたきぬ
ねむりゐる親の燕の胸動く