鳥とぶや深雪がかくす飛騨の国
吊橋の深雪ふみしめ飛騨へ径
兵を送る松明あらはるゝ深雪かな
鮎の炉の火かげとゞかず深雪の戸
駅凍てゝ曠野につゞく深雪かな
晴雪やうす紫の木々の影
晴雪や雫滝なす笹津橋
密林にこぼるゝ炭も霜を着け
一文字イチイの下枝霜つよし
霜置いてイチイが閉す山河哉
から松のおとす葉もなく霜を置く
もろ草やはりつくばかり霜に焦げ
鶺鴒の鋭声に消ゆる霜の花
静かさや枝垂るゝ松も霜つけて
大凍や松をこぼるゝ黄鶺鴒
老松の枯葉を誘ふ凍てつよし
雪おろす人の面を鷽わたる
雪卸し暮れており立つ深雪かな
暮れそむる奥山見えて雪おろす
帯のごと頽雪どめして山眠る
大いなる足音きいて山眠る
頭たれて月に覚め居り雪の山
雪山は月よりくらし貌さびし
雨ためて冬山の径つくるなし
冬山や径集りて一と平