炭部屋の中から見えし枯野かな 石鼎
病める母の障子の外の枯野かな 石鼎
泣きながら一人枯野を歩きけり 淡路女
今出でし炉火想ひ行く枯野哉 泊雲
往来人皆背ぐくまり枯野道 泊雲
日当たるや枯野にひゞく海の音 石鼎
帆消えて藺田に日あたる枯野かな 石鼎
枯野来て四人たまりし渡舟かな 喜舟
雪このかた馬も放たぬ枯野かな 亞浪
小さき家に人入りて枯野たそがれぬ 山頭火
僧の前を鴉のありく枯野かな 喜舟
神楽師の獅子かつぎゆく枯野かな 石鼎
唇の紅さ枯野を粛殺す 草城
躓きし石生きてとぶ枯野かな 茅舎
耕せし土黄に照れる枯野かな 橙黄子
山裾を欠き欠ぐ道の枯野かな 橙黄子
枯野路に影かさなりて別れけり 久女
枯野渡る人の白衣を撲つ日かな 橙黄子
畝作りし土は淋しき枯野かな 橙黄子
夕暮れて富士おそろしき枯野哉 石鼎
天つ日と我とまつはる枯野かな 石鼎
屋根の石落ちなんとして枯野かな 喜舟
空澄みて拝むほかなき枯野かな 水巴
鶺鴒の尾に叩かるゝ枯野かな 喜舟
月天に流星見えし枯野かな 花蓑
やうやくに山近寄りし枯野かな 橙黄子
只人の墓の群がる枯野哉 普羅
枯野みち帝釈道とありにけり 万太郎
汐入の池の名残も枯野かな 万太郎
夜を帰る枯野や北斗鉾立ちに 誓子