和歌と俳句

川端茅舎

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

お地蔵は笑み寒月の父の墓

寒の鯉金輪際をうごかざる

寒月の一太刀浴びて火の如く

寒月のらんらんとして怒れるか

金屏風立てしがごとく焚火かな

白日の下に卒塔婆を折り焚きぬ

宗達銀杏光琳紅葉焚火あと

墓は日々落葉燻しにあひつれど

良寛の手鞠の如く鶲来し

笹鳴やたかし来し日は光り飛び

枯野とはいへども鋪道月照りて

咳き込めば谺返しや杉襖

火の玉の如くに咳きて隠れ栖む

咳我をはなれて森をかけめぐる

我が咳に伽藍の扇垂木撥ね

昇天の竜の如くに咳く時に

竜の如く咳飛び去りて我悲し

咳き込めば夜半の松籟又乱れ

咳止んでわれ洞然とありにけり

散紅葉草の庵の屑を売り

極重に肩身に寒ののしかかり