川端茅舎
お地蔵は笑み寒月の父の墓
寒の鯉金輪際をうごかざる
寒月の一太刀浴びて火の如く
寒月のらんらんとして怒れるか
金屏風立てしがごとく焚火かな
白日の下に卒塔婆を折り焚きぬ
宗達銀杏光琳紅葉焚火あと
墓は日々落葉燻しにあひつれど
良寛の手鞠の如く鶲来し
笹鳴やたかし来し日は光り飛び
枯野とはいへども鋪道月照りて
咳き込めば谺返しや杉襖
火の玉の如くに咳きて隠れ栖む
咳我をはなれて森をかけめぐる
我が咳に伽藍の扇垂木撥ね
昇天の竜の如くに咳く時に
竜の如く咳飛び去りて我悲し
咳き込めば夜半の松籟又乱れ
咳止んでわれ洞然とありにけり
散紅葉草の庵の屑を売り
極重に肩身に寒ののしかかり