焚火して金屏風裡にあるが如
焚火あと光琳紅葉まきちらし
焚火人知らずや栄華物語
塔の森落葉煙の出し今朝よ
墓の面落葉煙にこそはゆき
上人の滅度の障子寒雀
大木の中 咳きながら抜けて行く
咳きながらポストへ今日も林行く
五重塔の下に来りて咳き入りぬ
わが咳や塔の五重をとびこゆる
寒林を咳へうへうとかけめぐる
咳止めば我ぬけがらのごとくなり
寒堂に光顔巍巍とおはします
大寒の下品下生のおんみこれ
あかあかと木魚は寒きいきを吹き
枯芝に九品浄土のみぢんたつ
寒椿日輪まこと揩スくて
ひと行くと躍り鞭打つ枯木影
寒梢の日の相既に沈沈と
御佛の金透く寒の格子とて
銀鳩にほこりつかずよ寒寂びて
さるすべり肌理こまやかに寒の日に
西方に揩スき日あり寒の芝
紺青の月夜なりけり寒旱