玉霰幽かに御空奏でけり
玉霰錦木の実もうちまぢへ
降り止んでひつそり並ぶ霰かな
玉あられまこと小さくちいさくて
咳かすかかすか喀血とくとくと
そと咳くも且つ脱落す身の組織
冬晴れを我が肺は早吸ひ兼ねつ
冬晴をまじまじ呼吸困難子
冬晴をすひたきかなや精一杯
病床の手鏡笹子生写し
病床の手鏡に逆枯芭蕉
日天子寒のつくしのかなしさに
寒のつくしたづねて九十九谷かな
寒の野につくしをかほどつまれたり
寒の野につくしつみますおんすがた
蜂の子の如くに寒のつくづくし
約束の寒の土筆を煮て下さい
寒のつくしたうべて風雅菩薩かな
金柑百顆煮て玲瓏となりにけり
金柑は咳の妙薬とて甘く
普門品よみをれば咳いでざりき