和歌と俳句

加藤楸邨

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の吹き緊りたる顔に逢ふ

爆音やおもひつめたる目に枯葉

母を待つ子に枯櫟葉を降らす

凩や空に爆ぜゆく生御魂

時雨雲とざしかねたる星に逢ふ

雲出づる冬天の川見て無言

鰯雲小草が絮をとばすのみ

信濃路へ冬天の川ながれをり

鰯雲夜天の深さはかられず

ものいへば傷つくごとくの黙

笹鳴や日の出の何ぞなつかしき

冬青き北斗七星にみまもらる

鉄兜脱げば背に負うふ天の川

黙ふかく冬の夜汽車を誰れも聴く

書けばすぐ悴みつつも筆力

地に伏せし身のまはりみな霜柱

爆音の真下濛濛とふれり

冬天を二三機過ぎて静かなり

胼の手に託すや遺書を信濃路へ

世に遠きことのごとしや鷦鷯

崖は立ち枯木は聳えわれは見る

悴みて相逢ひし顔思ひ出せず

霜夜そのふるさとびとを呼びて亡し

冬の玻璃闇を顔なき影はしる