萬象のしだいに冬の月夜かな
如月の雲にこもりて一機音
爆痕に鳩があそべり冬日さす
風花や午やや過ぎし観世音
死や生や冬日のベルト止むときなし
冬鵙の暮れんとしつつ雪明り
しんとして深雪の視野のあるばかり
外套の釦見飽かず爆音下
冴えかえる崖の谺の高まり来
霜に立つ「一本の葦」と呟きて
弾雲やはるかなりける冬の虹
豆煎るや床下に北風吹きこもり
下萌や雲上の座にまたひとり
葦は枯れ昼の爆音柱なす
爆煙へ一機矢のごとし冬梅咲き
一枚の石を据ゑてぞ雪くもる
氷上を枯葉はしれり笹鳴きす
笹鳴きを赤城颪が吹きさらふ
残雪や線消えかけし渾天儀
幾千の冬日の甍影をもつ
沈丁のほとりなりけり目ひらけば
春雪の鉄の兜を卓に置き
冴え返る雲ことごとく息づくか
息白く移転荷物の上に座す
残雪やひきよせてよむ杜少陵
一片の雪をくらひて雲に対す