雨蕭々雪代岩魚めざめんと
面当の紺に瞳があり冬木伐
男みて角巻の背がふとうごく
我を軸としいま吾妻嶺は青嵐
飛鳥仏青き蝗が膝をあるく
きらめく時雨少女笑へば塔ひびき
霜夜死の眸が我を見定む息溜めては
雪解雛おのれが殻をふまへたつ
聞きわけい海府訛は鱈のはなし
春怒濤鶏小屋へ鶏かへりゆく
禿の鷹越えんと噛みかけ林檎捨つ
春休み運動場を鵜があるく
雪がこひ牛の首出て一鳴す
はちめ食ふはちめのごとき口あけて
凌霄花の咲き垂れし門父母います
蝉を近づけ昼寝の母を子がのぞく
青卍美濃と飛騨とへ落ちゆく水
谿へ尿すはてきらきらと万緑へ
白桃や帰り雲岳雲いそぐ
梯子下るや昼寝の腹を見おろして
滅びゆくもの生れゆくものいま蜩
晩稲刈られて何か負ふものばかり逢ふ
雨いそぐ晩稲阿武隈は見あたらず
遺壁の寒さ腕失せ首失せなほ天使
爆死幾万は一つの釦北風鳴る
冬の鳩駈け平和像など形成れど