和歌と俳句

加藤楸邨

雨蕭々雪代岩魚めざめんと

面当の紺に瞳があり冬木伐

男みて角巻の背がふとうごく

我を軸としいま吾妻嶺は青嵐

飛鳥仏青き蝗が膝をあるく

きらめく時雨少女笑へばひびき

霜夜死の眸が我を見定む息溜めては

雪解雛おのれが殻をふまへたつ

聞きわけい海府訛は鱈のはなし

春怒濤鶏小屋へ鶏かへりゆく

禿の鷹越えんと噛みかけ林檎捨つ

春休み運動場を鵜があるく

雪がこひ牛の首出て一鳴す

はちめ食ふはちめのごとき口あけて

凌霄花の咲き垂れし門父母います

蝉を近づけ昼寝の母を子がのぞく

青卍美濃と飛騨とへ落ちゆく水

谿へ尿すはてきらきらと万緑へ

白桃や帰り雲岳雲いそぐ

梯子下るや昼寝の腹を見おろして

滅びゆくもの生れゆくものいま

晩稲刈られて何か負ふものばかり逢ふ

雨いそぐ晩稲阿武隈は見あたらず

遺壁の寒さ腕失せ首失せなほ天使

爆死幾万は一つの釦北風鳴る

冬の鳩駈け平和像など形成れど