むざんやな甲の下のきりぎりす 芭蕉
白髪ぬく枕の下やきりぎりす 芭蕉
淋しさや釘にかけたるきりぎりす 芭蕉
猪の床にも入るやきりぎりす 芭蕉
朝な朝な手習ひすすむきりぎりす 芭蕉
古城や茨ぐろなるきりぎりす 鬼貫
澄む月や髭をたてたる蛬 其角
悔いふ人のとぎれやきりぎりす 丈草
灰汁桶の雫やみけりきりぎりす 凡兆
さむしろやぬかご煮る夜のきりぎりす 北枝
草の葉や足のおれたるきりぎりす 荷兮
夜や昼や朝寝の床のきりぎりす 土芳
あさがほや鳴所替るきりぎりす 千代女
灯の届かぬ庫裏やきりぎりす 太祇
片足は踏とゞまるやきりぎりす 太祇
秋風に涕すゝりけりきりぎりす 召波
きりぎりす鳴止で飛音すなり 白雄
寒き声や敷居をくゞれきりぎりす 暁台
琴爪を礫にうつやきりぎりす 暁台
鳴神のたえ間や夜半のきりぎりす 几董
小便の身ぶるひ笑へきりぎりす 一茶
きりぎりす人したひよる火影哉 一茶
蛬きりきり死もせざりけり 一茶
夕汐や塵にすがりてきりぎりす 一茶
おとなしく留主をしていろ蛬 一茶
迯しなに足ばし折なきりぎりす 一茶
蛬身を売れても鳴にけり 一茶
蛬鳴やつづいて赤子なく 一茶
今よりは千草は植ゑじきりぎりすなが鳴く聲のいと物うきに 良寛
思ひつつ来てぞ聞きつる今宵しも聲をつくして鳴けきりぎりす 良寛
秋風の日に日に寒くなるなべにともしくなりぬきりぎりすの聲 良寛
我が園の垣根の小萩散りはてていとあはれさを鳴くきりぎりす 良寛