まねきまねき枴の先の 薄かな
百舌鳥なくや入日さし込女松原
吹風の相手や空に 月一つ
初潮や鳴門の浪の飛脚舟
物の音ひとりたふる ゝ案山子哉
上行と下くる雲や龝の天
稲かつぐ母に出迎ふうなひ哉
肌さむし竹切山のうす紅葉
立出る秋の夕や風ぼろし
世の中は鶺鴒の尾のひまもなし
灰捨て白梅うるむ垣ねかな
鶯や下駄の歯につく小田の土
骨柴のかられながらも木の芽かな
野馬に子共あそばす狐哉
蔵並ぶ裏は 燕のかよひ道
鷲の巣の樟の枯枝に日は入ぬ
鶏の声もきこゆる山桜
ある僧の嫌ひし花の都かな
はなちるや伽藍の枢おとし行
市中は物のにほひや夏の月
灰汁桶の雫やみけりきりぎりす
海山に五月雨そふや一暗み
綿ふくや河内もみゆる男山
こもりせで今年も萌る芭蕉哉
蜻蛉の藻に日をくらす流かな