和歌と俳句

野沢凡兆

雪ふるかともしびうごく夜の宿

猪の首の強さよ年の暮

荻萩と下葉くらべよ長みじか

蕎麦白き花野をゆけば花野哉

念仏よりあくびたふとき霜夜哉

山吹の莟も青し吉野川

木のまたのあでやかなりし柳哉

あばらやの戸のかすがひよなめくじり

くだけたる船の湊やほととぎす

青葉かな起て舌かく初瀬川

大歳をおもへばとしの敵哉

桐の木の風にかまはぬ落葉かな

明ぼのやすみれかたぶくうごろもち

わびぬれば身は埒もなきもづく哉

住よしや河掘添て春の海

捨舟のうちそとこほる入江かな

雲雀鳴く下はかつらの河原哉