和歌と俳句

良寛

やさしくも来ませるものよなでしこの秋の山路をたどりたどりて

秋の野の尾花にまじる女郎花月の光にうつしても見ん

女郎花多かる野べにしめやせんけだし秋風よぎて吹くかと

我が待ちし秋は来にけり月くさのやすの川原に咲きゆく見れば

あはれさはいつはあれども葛の葉のうら吹き返す秋の初風

秋山に咲きたる花をかぞへつつこれのとぼそに辿り来にけり

叉も君柴の庵をいとはずばすすき尾花をわけて訪ひ来よ

この岡の秋萩すすき手折り来て我が衣手に露はしむとも

この岡の秋萩すすき手折りもてみ世の佛にたてまつらばや

秋風の尾花吹きしく夕暮は渚によする波かとぞ思ふ

秋風になびく山路のすすきの穂見つつ来にけり君が家べに

秋風に露はこぼれて花すすきみだるる方に月ぞいざよふ

秋の日に光りかがやく花薄ここのお庭にたたして見れば

秋の日に光りかがやく薄の穂これの高屋にのぼりて見れば

あしびきの山のたをりに打ちなびく尾花たをりて君が家べに

ゆきかへり見れどあかず我が庵の薄が上における白露

ねもごろに我れを招くかはたすすき花のさかりにあふらく思へば

み山べの山のたをりにうちなびく尾花ながめてたどりつつ来し

秋の野の薄かるかや藤袴君に見せつつ散らば散るとも

わが庵の垣根に植ゑし八千草の花もこの頃咲き初めにけり