やさしくも来ませるものよなでしこの秋の山路をたどりたどりて
秋の野の尾花にまじる女郎花月の光にうつしても見ん
女郎花多かる野べにしめやせんけだし秋風よぎて吹くかと
我が待ちし秋は来にけり月くさのやすの川原に咲きゆく見れば
あはれさはいつはあれども葛の葉のうら吹き返す秋の初風
秋山に咲きたる花をかぞへつつこれのとぼそに辿り来にけり
叉も君柴の庵をいとはずばすすき尾花をわけて訪ひ来よ
この岡の秋萩すすき手折り来て我が衣手に露はしむとも
この岡の秋萩すすき手折りもてみ世の佛にたてまつらばや
秋風の尾花吹きしく夕暮は渚によする波かとぞ思ふ
秋風になびく山路のすすきの穂見つつ来にけり君が家べに
秋風に露はこぼれて花すすきみだるる方に月ぞいざよふ
秋の日に光りかがやく花薄ここのお庭にたたして見れば
秋の日に光りかがやく薄の穂これの高屋にのぼりて見れば
あしびきの山のたをりに打ちなびく尾花たをりて君が家べに
ゆきかへり見れどあかず我が庵の薄が上における白露
ねもごろに我れを招くかはたすすき花のさかりにあふらく思へば
み山べの山のたをりにうちなびく尾花ながめてたどりつつ来し
秋の野の薄かるかや藤袴君に見せつつ散らば散るとも
わが庵の垣根に植ゑし八千草の花もこの頃咲き初めにけり