和歌と俳句

良寛

露霜にやしほ染めたる紅葉ばを折りてけるかも君まちがてに

音にきく樋曾の山べの紅葉見に今年はゆかん君のなごりに

紅葉ばの降りに降りしく宿なれば訪ひ来ん人も道まどふらし

もみぢばのちらまくをしみあしびきの木の下ごとに立ちつつもとな

もみぢ葉のさきを争ふ世の中に何をうしとて袖ぬらすらん

うちつけに散りなば惜しき紅葉ばを見つつしのばん秋のかたみに

あしびきの山の紅葉をかざしつつ遊ぶや今宵は百夜つぎたせ

ひさがたの時雨の雨の間なく降れば峰の紅葉は散りすぎにけり

あしびきの山の紅葉ば散りすぎてうら淋しくもなりにけるかな

もみぢばの散りにし人のおもかげを忘れで君がとふぞうれしき

今よりはつぎて木 々の葉色づかんたづさへて来よ一人二人を

秋山のもみぢ見がてら我が宿をとひにし人はおとづれもなし

もみぢ葉の散る山里はききわかぬ時雨する日もしぐれせぬ日も

木の葉散る森の下屋は聞きわかぬ時雨する日もしぐれせぬ日も

秋山の紅葉はすぎぬ今よりは何によそへて君をしのばん

山奥に見捨ててかへるうす紅葉我れを思はんあさき心を

やり水のこの頃音の聲せぬは山の紅葉の散りつもるらし

我が宿のまがきに植ゑし蔦かづら今日この頃は紅葉しぬらし

此山のもみぢも今日は限りかな君しかへらば色はあらまし

をちこちの山のもみぢ葉散りすぎて空さみしくぞなりにけらしも