白つゆはことにおかぬをいかなればうすく濃く染む山のもみぢば
この宿のひと本すすきなつかしみ穂に出る秋はとめて我が来ん
思ふどち門田のくろに圓居して夜は明かしなん月の清きに
あだなりと人はいふとも浅茅原あさわけゆかん思ふ方には
ひさがたの降り来る雨か谷のとか夜のあらしに散るもみぢばか
露ながら手折りてぞ来し萩の花いつか忘れん君が心を
手を折りてうちかぞふれば此の秋もすでになかばをすぎにけらしも
かくばかりありけるものを世の中は何朝がほをもろしと思はん
山里の草のいほりに来て見れば垣根に残るつはぶきの花
あしびきの山もみぢばはさすたけの君には見せつ散らばこそ散れ
蟲は鳴く千草は咲きぬこの庵を今宵は借らん月出づるまで
晴るるかと思へばくもる秋の空うき世の人の心知れとや
たまぼこの道のひまごとしをりせんまた来ん秋はたづね来んため
花の野にしをりやせましひさがたのまた来ん秋はたづね来んため
行く秋のあはれを誰れに語らましあかざ籠にみて帰へる夕ぐれ
秋もやや衣手寒くなりにけり草の庵をいざとざしてん
秋の夜もややはだ寒くなりにけり一人や君があかしかぬらん
秋もやや衣手寒くなりにけりつづれさせてふ蟲の告ぐれば
秋もややうらさびしくぞなりにけりいざ帰りなん草の庵に
秋もやや夜寒になりぬ我が門につづれさせてふ蟲の聲する