ふる里をよろよろここに武蔵野の草葉の露とけぬる君はも
萩がへにおく白露の玉ならば衣のうらにかけて行かまし
白露に咲きたる花を手折るとて秋の山路にこの日くらしつ
露はおきぬ山路は寒し立ち酒を食して帰らんけだしいかがあらん
月夜にはいもねざりけりおほとのの林のもとにゆきかへりつつ
秋の野の尾花における白つゆを玉かとのもぞあやまたれける
風になびく尾花が上におく露の玉と見しまにかつ消えにけり
秋の野の草むら毎におく露はよもすがらなく蟲の涙か
なほざりに我が来しものを秋の野の花に心をつくしつるかも
秋日和染むる花野にもとゐして蝶もとも寝の夢を結ばん
秋の野に咲きたる花を数へつつ君が家辺に来たりぬるかも
秋の野の千草ながらに仇なるを心にそみてなぞ思ひける
百草の千草ながらにあだなれど心にしみてなぞ思ひける
秋の野の千草ながらに手折りなん今日の一日は暮れば暮るとも
秋の野に草葉おしなみ来し我れを人なとがめそ香にはしむとも
秋の野を我がわけ来れば朝霧にぬれつつ立てりをみなへしの花
秋山を我れこえ来れば朝霧にぬれつつ立てりをみなへしの花
女郎花紫苑なでしこ咲きにけり今朝の朝けの露にきほひて
秋の野ににほひて咲ける藤袴折りておくらん其の人なしに
白つゆにみだれて咲ける女郎花つみておくらん其の人なしに