和歌と俳句

良寛

ふる里をよろよろここに武蔵野の草葉の露とけぬる君はも

萩がへにおく白露の玉ならば衣のうらにかけて行かまし

白露に咲きたる花を手折るとて秋の山路にこの日くらしつ

露はおきぬ山路は寒し立ち酒を食して帰らんけだしいかがあらん

月夜にはいもねざりけりおほとのの林のもとにゆきかへりつつ

秋の野の尾花における白つゆを玉かとのもぞあやまたれける

風になびく尾花が上におく露の玉と見しまにかつ消えにけり

秋の野の草むら毎におく露はよもすがらなく蟲の涙か

なほざりに我が来しものを秋の野の花に心をつくしつるかも

秋日和染むる花野にもとゐして蝶もとも寝の夢を結ばん

秋の野に咲きたる花を数へつつ君が家辺に来たりぬるかも

秋の野の千草ながらに仇なるを心にそみてなぞ思ひける

百草の千草ながらにあだなれど心にしみてなぞ思ひける

秋の野の千草ながらに手折りなん今日の一日は暮れば暮るとも

秋の野に草葉おしなみ来し我れを人なとがめそ香にはしむとも

秋の野を我がわけ来れば朝霧にぬれつつ立てりをみなへしの花

秋山を我れこえ来れば朝霧にぬれつつ立てりをみなへしの花

女郎花紫苑なでしこ咲きにけり今朝の朝けの露にきほひて

秋の野ににほひて咲ける藤袴折りておくらん其の人なしに

白つゆにみだれて咲ける女郎花つみておくらん其の人なしに