月光に風のひらめく秋ざくら
向日葵の秋日の蕊となりにけり
今年藁みどりほのかに新娶り
山の墓香煙雲のごとき秋
山廬忌の秋は竹伐るこだまより
秋茄子の露の二三顆草がくれ
秋霖の夕焼ほのと飛燕見ゆ
熟れそめて細枝のしなふ柘榴かな
照紅葉且つ散る岩根みづきけり
咲きのぼる秋暑の胡麻に烏蝶
障子はる影もろともに老いにけり
新涼の剃刀触るる頬たかく
静脈のほのかなる手に檸檬きる
茸狩りのわらべこだまに憑かれけり
仲秋や母に明るき仏の灯
鳳仙花露の香あまく日に濡れぬ
綿摘むや雲のさゝなみ空たかく
木犀の香や年々のきのふけふ
夕風にしはぶき拾ふ落穂かな
夕霧や地にしづまりし麦の種
竜胆に霧ふる泉澄みにけり
檸檬青し海光秋の風に澄み