垂乳根のよはひの秋の墓参かな
秋汐や仏をさがす舟二艘
袷人秋さびしさに堪へにけり
この秋の袖丈つめし袷かな
秋の夜や嵩なくたたむ旅ごろも
秋の夜の路銀かぞふるふしどかな
箒木に秋めく霧の一夜かな
簾外の萩秋暑く雨の蠅
糧秣庫秋暑の雨にとざしけり
したたかに閼伽たてまつる秋暑かな
掃き清む寺苑の土の秋暑かな
榧実る寺苑の秋暑おとろへぬ
初秋の三日月ほのと雲のあひ
夕ごころはなやぎ迎ふ二星かな
飛魚昏れて盆の大潮みちそめぬ
山霧にしめりて明き燈籠かな
台風の篠つく雨に息づけり
秋茄子の花咲きとむる二つ三つ
秋茄子根の土もろくひかれけり
たちいでて尊く踏むや秋の土
仏の灯浴びて良夜のあるじかな
宵すぎの薄雲わたつ望の月