鶺鴒 しろがねの銭 かぞへゆく 冷き声に 啼く真昼かな
いしたたき ちさきめうとの 頬を寄せて 啼くよ浅瀬の 白石のうへに
いしたたき やまずしもなく さびしさに わが日の昼も 更けにけるかな
いしたたき ちちと飛びかひ 啼く久し 真白川原の 瀬を浅みかも
木々の影 はだらに黒き 川隈に 啼きつつ去らぬ 二羽いしたたき
二羽とのみ 思ひしものを いしたたき またも来啼けり 昼深みつつ
秋の鳥 百舌鳥ぞ来啼ける 夏山の この山かぜの 真白きなかに
ほととぎす 樫鳥ひよ鳥 なきやまぬ 狭間の昼の 郭公のこゑ
何鳥か 雛をそだつる ふくみ声 今朝も老樹の 風に聞ゆる
うすものの 白きを透きて 紅ゐの 裳の紐ぞ見ゆ こち向くなゆめ
峰のうへに 巻き立てる雲の くれなゐの 褪せゆくなべに 秋の風吹く
みねの風 けふは沢辺に 落ちて吹く 広葉がくれの 葛の秋花
相模なる その長浜の 白浜に 出でてか今日も 独り浪見む
下野の 那須野が原の なつ草の なかにし君を 見む日近づく
那珂川に 生けるうろくづ 悉く くらへとわれに 強ひし君かも
うばたまの 夜の川瀬の かちわたり 足に触りしは 何の魚ぞも
松明を さしかがやかし わが渡る 早瀬の小魚 雨降るごとし
別れ来し けふの汽車路は 夏雲の 湧き立つ野辺の なかにしありけり
若竹の 伸びゆく夏の しののめの すがすがしさに 君はおはしき