和歌と俳句

原 石鼎

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よりそひて老い花しげき野菊かな

なきながら家鴨流るゝ野菊かな

蓮の実のわかきみどりや水に影

寺の井に竹簀の蓋や銀杏の実

葉の中の太枝に日や銀杏の実

大鹿やのそりとゐたる露葎

秋の人呆然として灰の中

朝顔の実をむすびゐし地震かな

声かれてなくかなかなや地震の

秋晴や鳴動いたる富士の底

下町の大火の上の秋の月

を来し犬咬へゐし人の骨

只一つ白朝顔の咲きし庵

の葉さゝくれ欠けて筋強し

秋晴のまことの色を草の穂に

病人に枕上みなる秋の暮

穂すゝきの茎むらさきや霧の中

熟柿もつ乳児見つつ打つかな

花二つ集り輝ける大黄菊

コスモスは遥かの垣や菊畑

俄かなるよべの落葉や菊日和

我墓やわが来しのみの下駄の跡

掌うら足うら後へかへすかな

城かべに松の暗さや盆の月

旅に居て仏恋しや盆の月