出水川かなかな鳴いて日当りぬ
西瓜うまし皮の緑を遠く赤
とび石を踏みも外さず月夜人
稗草の穂に蜻蛉や霧の中
稲架に稲は刈られず霧の日々
夕さればしづまる風や秋日影
鶏冠にもえつく日あり秋の晴
石二つ相よる如し秋のくれ
神は皆べに葉によりぬ秋の暮
柿食ふや俳諧我に敵多し
雨にぬれ日にあたゝみて熟柿かな
菊剪るや提灯もすこしあげよといふ
老鹿に僧つきつけし拳かな
老鹿の毛ふさふさとちりもなし
楼門の扉に老鹿は美しき
あはれさは夜嵐つのる遠花火
新涼や削りし地を箕に
我鼻に汗ぼ一つや鳳仙花
西瓜食ふ鴉に爪と嘴あり
ちぎれとぶ葉のよろこびや暁野分
梁を見上げし父と子に野分
うがひして谷上る杣や夕芒
刈れば根に水ふくみゐし薄かな
蟷螂の横に倒れて死にゐたり
乳房に似て扉の鋲悲し月の霧