杣が身に霧ふる音や巌の上
コスモスの花のしげきに月日あり
夜の地に草の微光や秋の雨
水落として間もなき稲に光りかな
鳥渡る羽音や谷の風の中
色鳥の去りたる枝の細さ哉
山里やところかへつつ鵙高音
霧かんで猛りし鵙や舌赤し
嘴深く熟柿吸うたる眼白かな
熟柿吸ひし眼白に嘴に秋日かな
木の実とぶや草木ふるはす風の中
栗の毬四つに開いてふまれあり
黄なる葉の日含みやすき紅葉かな
撞木はじいて鐘ばんじゃくや暮の秋
草明りして露くらし星月夜
人の目に銀漢もゆる虫の原
曇り来し銀河に瀬々の光りかな
銀漢や軒に吊るせし唐辛子
麓の灯いつかは消ゆる天の川
コスモスの花に燃えつく銀河かな
岐阜提灯の下のあかりに思ふこと
帝劇へ風船落ちし花火かな
遠花火見えて夜深き牧場かな
新涼や子とつれあそぶ大山蟻
新涼や日に影うつる鳳仙花