和歌と俳句

鶏頭 鶏冠 からあい

一本の鶏頭燃えて戦終る 楸邨

飢きざす鶏頭の丹を見たるとき 楸邨

鶏頭燃ゆ去年の想ひに似つかずも 占魚

鶏頭を三尺離れもの思ふ 綾子

鶏頭も過ぎし月日をもつてゐる 綾子

衰へし犬鶏頭の辺を去らず 信子

鶏頭を嘆かず人をまた恃まず 波郷

鶏頭の倒れて燃ゆるうらがなし 亞浪

事あれば鶏頭の日の新しさ 綾子

見得るだけの鶏頭の紅うべなへり 綾子

鶏頭よ子よわれ咳をとどめ得ず 波郷

鶏頭起きる野分の地より艶然と 多佳子

鶏頭の素朴が好きで日が暮れて 鷹女

舌の毒鶏頭はいま燃えつつあり 楸邨

雨の鶏頭病癒ゆるをたのしまず 波郷

子の尿を犬も見てゐる鶏頭の前 綾子

胸許に鶏頭の紅わかわかし 波郷

呆けをり鶏頭見ては甕見て 波郷

鶏頭の硬き地へ貧弱なるくさめ 三鬼

雨の鶏頭厭離てふ語を思ひをり 波郷

鶏頭>の十字架の数月照らす 三鬼

鶏頭の澎湃として四十過ぐ 波郷

鶏頭を若者をすでにおそれそむ 波郷

供華多きなかに緋縅の鶏頭花 秋櫻子

わが庭の鶏頭手向け安心す 立子

命美し槍鶏頭の直なるは 波郷

鶏頭の安し子の声家にあれば 爽雨

鶏頭の雨見ゆ花のすこし上 爽雨