蛍火や吹とばされて鳰のやみ
はつ露や猪の臥芝の起きあがり
君が手もまじるなるべし花薄
か ゝる夜の月も見にけり野辺送
一戸や衣もやぶる ゝこまむかへ
梅が香や山路猟入ル犬のまね
ひとり寝も能宿とらん初子日
鉢たたきこのよとなれば朧なり
うき友にかまれてねこの空ながめ
振舞や下座になをる去年の 雛
知人にあはじあはじと花見かな
鳶の羽も刷ぬはつしぐれ
春や祝ふ丹波の鹿も帰とて
朧月一足づゝもわかれかな
花守や白きかしらを突あはせ
うのはなの絶間たたかん闇の門
すゞしさや浮洲のうへのざこくらべ
名月や椽取まはす黍の虚
蘆のほに箸うつかたや客の膳
滝壺もひしげと雉のほろ ゝ哉
立ありく人にまぎれてすゞみかな
寐道具のかたかたやうき魂祭
凉しくも野山にみつる念仏哉