和歌と俳句

榎本其角

網代守大根盗をとがめけり

蜑のかるかぶ菜おかしやみるめなき

蕪汁や霜のふりはも今朝は又

おほふ哉さまさぬ袖を納豆汁

万代の〆をあけけり神楽帳

夜神楽や鼻息白し面の内

誰と誰が縁組済で里神楽

蟷螂の尋常に死ぬ枯野

河豚あらふ水のにごりや下河原

河豚汁に叉本艸の咄哉

鮟鱇をふりさけ見れば厨かな

蠣むきや我には見えぬ水鏡

憎まれてながらふる人冬の蠅

炭屑にいやしからざる木のはかな

君と我に手をかへすしかなかれ

起き出て事しげき身や足袋頭巾

いそがしや足袋売に逢ううつの山

紙子きて渡る瀬もあり大井川

寝こころや火燵蒲団のさめぬ内

逢にかかる命や勢田の霜

山犬を馬が嗅ぎ出す霜夜かな

冬川や筏のすはる草の原

何となく冬夜隣をきかれけり

この木戸や鎖のさされて冬の月

鼻を払く孔雀の玉や煤ごもり

暁のつくはたつたや寒念仏

寒菊や古風ののこる硯箱

豆をうつ声のうちなる笑かな



宗鑑 貞徳 季吟 宗因 来山 言水 才麿 鬼貫 芭蕉 素堂 嵐雪 去来 丈草 凡兆 史邦 杉風 荷兮 曾良 路通 越人 土芳 野坡 支考 許六 浪化 惟然 北枝 涼菟 千代女 也有 蕪村 召波 暁台 白雄 太祇 几董 青蘿 一茶