草すでに八百屋の軒に芳し
ふりあぐる鍬の光や春ののら
とぼとぼと日は入切て梅の花
蜈のり栄螺の洞に潜てけり
風なぎや花にとれたつ市の魚
防風ゆるく咲く青酢漸く垂れり
茗荷だけ葉せうがの上に立んことを
おぼつかな土用の入の人心
行馬の跡さへ暑きほこり哉
魚干て病家にゆるす夏日和
風の日は何にかたよる杜宇
青わさび蟹が爪木の斧の音
提灯の空に詮なしほととぎす
橘や定家机のありどころ
卯の花にぱつとまばゆき寝起哉
五月雨に蛙のおよぐ戸口哉
すつと来て袖に入たる蛍哉
月の頃は寐に行夏の川辺哉
飛胡蝶まぎれて失し白牡丹
杜若花あるうちは降れ曇れ
空も地もひとつになりぬ五月雨
五月雨やながう預る紙づつみ
石原も踏ちめられぬあつさ哉
あかつきの鐘をさそひし郭公
夕顔やあたりを見れば灰俵