白樺に日輪こもる露けさよ
河骨や池それぞれに岳の影
澄む水のいや澄み岩魚ひそむらし
今日の月待つなる鴟尾に雲ふかし
対の供華おのおの芒秀でけり
厨子をがむ一念月も雲をいづ
月幾世照らせし鴟尾に今日の月
灯の尽きし紙燭をかこみ虫時雨
俄かにも秋雷到る讃佛会
栗鼠あそぶ今日を祭の布留の宮
五十まりの風鐸寂びつ薄紅葉
十六夜や寧楽山ふかき客舎の灯
十六夜の山亭犬を放ちあり
十六夜や花閉ぢあへぬ白芙蓉
十六夜や泊りてむせぶ蚊遣香
十六夜や庭の奥処に鹿の声
真白毛の猫かがやけり萩の風
蝗飛ぶ田を残すなり門の前
月を待つ供華の芒や伎芸天
夢殿へ日輪移る秋日和
みんなみへ堂ひらきたり鰯雲
いかるがの一の菩薩や菊満ちて
刈込に茶の花にほふ十三夜
蓼なびき十月既望晴れにけり
はたはたの十月既望飛べる見ゆ