和歌と俳句

平畑静塔

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最上川田植を率ゐ田を率ゐ

田の水を浴びて白馬が出羽を鋤く

葭切や奥の細道雲を笠

梅雨きのこ大東京に根を下ろす

泰山木咲き東京を濡らす雨

花菖蒲小波びたし利根びたし

水馴棹にて葭切を叱りつけ

栗の花ふり乱すなり多佳子の忌

青まほら成して早乙女ひきさがる

子神輿は軽し贔屓の青あらし

雲の峯初の奥山育ちなる

追ひこしてゆく強力の息は声

安眠の上にキャンプを尖らしむ

山国の道をかなしぶ西日消え

降雹や屋根をかづきし多佳子の忌

一弁の落ちて牡丹の神離る

白あやめ潮来の蠅が一つ付く

栗の花匂ふ衣紋をすこし抜き

蛍籠閨の灯とせり星とせり

接しては滝の平常心を聴く

雷峯となす山口に注連を張り

榊にて下天を祓ふ山開

樺の山神の高峯は開かれし

朝ぼらけ残れる月の山開

常の歩みよ山開より下りて