平畑静塔
菖蒲園隅より水の忍び出で
天秤に荷ふ牡丹の化粧水
紬機座る牡丹の花ならで
黒薔薇の中の黒撰る多佳子の忌
競馬場倫敦風に薔薇咲かせ
レモンの酸月山は日に耐ゆる山
月山にねがふ形代身銭添へ
泉吸ふ草木と同じ生を享け
人肌の湯殿詣やあしのうら
ひんやりと湯殿詣の口を縫ふ
夕顔に灌頂されし青果なる
夕顔に鶏は玉乗しかぬるよ
子雷太鼓しめらせはぐれたる
水張つて近江めざめの田を揃へ
名は裏見袖ぬれてこそ忍ぶ滝
一列を以て登拝古式なる
帷子よ芭蕉登拝せしとせば
雲海の上の行道有頂天
筍に竹の落葉のたより降る
筍の堀場移りは犬に従く
夏蜜柑をみなは海にかかづらふ
水茎の一気多佳子の命青