和歌と俳句

平畑静塔

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

菖蒲園隅より水の忍び出で

天秤に荷ふ牡丹の化粧水

紬機座る牡丹の花ならで

黒薔薇の中の黒撰る多佳子の忌

競馬場倫敦風に薔薇咲かせ

レモンの酸月山は日に耐ゆる山

月山にねがふ形代身銭添へ

泉吸ふ草木と同じ生を享け

人肌の湯殿詣やあしのうら

ひんやりと湯殿詣の口を縫ふ

夕顔に灌頂されし青果なる

夕顔に鶏は玉乗しかぬるよ

子雷太鼓しめらせはぐれたる

水張つて近江めざめの田を揃へ

名は裏見袖ぬれてこそ忍ぶ

一列を以て登拝古式なる

帷子よ芭蕉登拝せしとせば

雲海の上の行道有頂天

に竹の落葉のたより降る

の堀場移りは犬に従く

夏蜜柑をみなは海にかかづらふ

水茎の一気多佳子の命青