菖蒲湯に生きよ生きよと友と濡れ
ぽつかりと檻破られて五月の青
血のバラや数分前に懺悔すみ
なめらかに進み蛍の火は尽きし
鳩踏む地かたくすこやか聖五月
夕焼の中や聖書の反りもどる
母の砥石ゑぐれてくぼむ真夏かな
故郷の電車今も西日に頭振る
迷彩をいまに剥がさず地上の薔薇
聖書に咲く黄黴青黴虚構ならず
道をしへ跳ね跳ね昭和永きかな
零落や大手ひろげて枇杷実る
死にて生きてかなぶんぶんが高く去る
植田より風ひきつけてミシン弾む
耐えがたく昼寝ころりと家の妻
てんたう虫翔つや闇屋の空の肩
青田より不意につたなし補虫網
石垣のごとくひつそり友の昼寝
蝉声や全裸の山の樹にこもる
けがれては下るケーブル合歓こする
雷雲のしもべとなりて往診す