和歌と俳句

懸崖や蟹さばしりて道通ず 秋櫻子

大き蟹愚かなまなこもちにけり 草城

歩み去りあゆみとどまる夜の蟹 蛇笏

わが行けば一切の蟹葭隠る 誓子

爪がかりなく崖の蟹落ちゆけり 誓子

水高ノあまたの蟹のかくれがほ 誓子

崖攀ぢて蟹いつまでも砂こぼす 誓子

崖攀づる蟹や吾より高くなり 誓子

蟹の爪一撃岸のものを打つ 誓子

他の蟹を如何ともせず蟹暮るる 耕衣

蟹雌雄我慢の紅爪天へかざし 草田男

群蟹や独り据ゑられ人魚像 草田男

家にきて新聞紙踏む海の蟹 不死男