和歌と俳句

後撰和歌集

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よみ人しらず
ささがにのそらに巣かける糸よりも心細しやたえぬとおもへば

返し よみ人しらず
風ふけばたえぬと見ゆる蜘蛛の囲も又かきつかでやむとやはきく

よみ人しらず
名にたちて伏見の里といふことは紅葉を床に敷けばなりけり

ひとしきこのみこ
我も思ふ人も忘るな有磯海の浦吹く風のやむ時もなく

山田法師
あしひきの山したとよみなく鳥もわがことたえす物思ふらめや

よみ人しらず
今はとてあきはてられし身なれどもきりたち人をえやは忘るる

兼輔朝臣
思ひいでてきつるもしるくもみぢ葉の色は昔にかはらざりけり

坂上是則
峰高み行きても見べきもみち葉をわがゐながらもかざしつるかな

よみ人しらず
まつ人はきぬときけどもあらたまの年のみ越ゆるあふさかの関