ぬかるみ赤いのは落ちてゐる椿 山頭火
落ちては落ちては藪椿いつまでも咲く 山頭火
山の椿のひらいては落ちる 山頭火
いちりん挿しの椿いちりん 山頭火
酔ひたい酒で、酔へない私で、落椿 山頭火
借せといふ貸さぬといふ落椿 山頭火
鴉が啼いて椿が赤くて 山頭火
椿ぽとりとゆれてゐる 山頭火
浦凪や打ちあげてある落椿 風生
波のくる砂に椿のさしてあり 青邨
落椿幽きにふゆる眺かな 草城
あふぎみて椿の花に見おろさる 草城
葉の下に雪をかむらぬ玉椿 立子
しめりたる如き蘂はき落椿 立子
椿山けうとかりける鳥の貌 鴻村
山神や椿の冷えにまつられて 鴻村
枇杷の葉に椿まぎれず咲きしかな かな女
落椿紅も褪せずに流れけり 淡路女
花椿ひろふ子に樹の高さかな 淡路女
雪を消す雨の降りをり落椿 たかし
白椿赤椿幹黒くして 花蓑
住みなれて藪椿なんぼでも咲き 山頭火
藪かげ椿いちりんの赤さ 山頭火
わかれしなの椿の花は一輪ざしに 山頭火
夕日いつぱいに椿のまんかい 山頭火
八重雲に山つばき咲きみだれけり 蛇笏
紅椿白玉椿園の奥 石鼎
鶴冠の上下す見ゆれ玉椿 石鼎
白玉や蕊のなよびもおそ椿 石鼎
鶴の鼻にふとひげ見ゆれ玉椿 石鼎
椿落ちず神代に還る心なし 久女
椿咲く絶壁の底潮碧く 久女
処女美し連理の椿髪に挿頭し 久女
日表の莟も堅しこの椿 久女
椿濃し神代の春の御姿 久女
神代より変らぬ道ぞ紅椿 久女
落椿あかき鼻緒の庭草履 立子
落椿みな熊笹に沈むなり 立子
石垣に沿うて続くや落椿 立子
落椿見上げてやがて磴上る 立子
鵯猛けく稚木の椿さく峯かな 蛇笏
椿咲く針葉樹林拓かれぬ 蛇笏
瓣六分葉の面の椿こよなうて 石鼎
ひよろ長き梢のさきの椿かな 石鼎
はなびらの中の花粉や白椿 石鼎
した枝の白玉椿夕まぐれ 石鼎
白椿葉もれ日幹の中どころ 石鼎
赤きものここに落つ山椿なり 青邨
椿手にものを茹でゐる地獄かな 爽雨