春雷の晴るるけしきになりしづむ
相つれては相わかれては岩燕
ぬか雨にまぢかな木の芽ぬれてある
とりどりに木の芽しそめし狭庭かな
木の芽ごろ炊煙時にみごとなる
寝しづまる頃に月ある木の芽かな
瓣六分葉の面の椿こよなうて
ひよろ長き梢のさきの椿かな
はなびらの中の花粉や白椿
した枝の白玉椿夕まぐれ
白椿葉もれ日幹の中どころ
青々と畳張りかへ庵椿
信心の眼に日向ある椿かな
おのが葉の落葉ばかりや白椿
これ見よと拾ひきたりし紅椿
椿落ちて漂へりしが瀬へ流れ
椿つないで瓔珞かうも長きかな
落椿拾ひし子ある夕かな
落椿ふみつつえらび拾ふ子よ
崖なだらのかなたの椿はなざかり
紅椿まづ映るみえ池ふるし
朝の日も夕日もかかる椿かな
霞む日の一ときはげしこひ心
寐ねざめの顔にさちあれ庵霞
外濠に鴎浮きたる霞かな