霞みきて木の芽あからむおもひかな
眼の前の木に風見えて朝霞
昼の木々露しみながら霞みけり
大いなる光りあげたり春の露
踵かへして海をそがひや春の空
春夜とは心の舵をたてつづけ
炭斗に炭二かけや夜半の春
雨音やいとど朧と思ひしに
急須の茶しぼりたらすよ夕朧
菜の花の日々に濃まさり朧かな
朧とは夜々の菜飯のやはらかな
横なれば灯の明う見え朧かな
上へとぶ落花ばかりや花曇
晴れぎはの雨になき出ぬ雀の子
地なる鳩へ群れとぶ鳩もまた春に
露を蹴てとぶ蝶ありぬ嫩楓
露を蹴てとぶ蝶ありぬ花楓