和歌と俳句

原 石鼎

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霞みきて木の芽あからむおもひかな

眼の前の木に風見えて朝霞

昼の木々露しみながら霞みけり

大いなる光りあげたり春の露

踵かへして海をそがひや春の空

春夜とは心の舵をたてつづけ

炭斗に炭二かけや夜半の春

雨音やいとどと思ひしに

急須の茶しぼりたらすよ夕朧

菜の花の日々に濃まさり朧かな

朧とは夜々の菜飯のやはらかな

横なれば灯の明う見えかな

上へとぶ落花ばかりや花曇

晴れぎはの雨になき出ぬ雀の子

地なる鳩へ群れとぶ鳩もまた春に

露を蹴てとぶ蝶ありぬ嫩楓

露を蹴てとぶ蝶ありぬ花楓