ほのと積めば粉雪霰も春のもの
落椿朽ち流るるも花の数
一枝の椿を見むと故郷に
月影に春の霰のたまり居り
月影に春の霰を踏もうとす
母癒えよと春の霰の月に歩す
春雪に華やかなりし夜なりけり
紅椿白玉椿園の奥
故郷のすすしの蔭や春の雪
鶴冠の上下す見ゆれ玉椿
白玉や蕊のなよびもおそ椿
鶴の鼻にふとひげ見ゆれ玉椿
桃椿なべて蕾は春深し
本堂の柱に映る木の芽かな
本堂の太しき柱木の芽時
青梅をくぐりくぐりて下くらし
咲きのこる椿一花や平林寺
何やらの花も絮も降る平林寺
梅搗ちて草木土とにほふかな
霞みけり日は降りながら庭の面
摘みて来て白菫ぞとわが掌へ
風すぢのままの茅花に夕日かな
夕なべに茅花流しはなごみがて
大風をしづめの雨も彌生かな
春宵や人の屋根さへ皆恋し
たへがたう心ふと濃し春の宵